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未経験でIT就職、辞めたら「研修費を返せ」と言われた?労働基準法16条の線引きと確認手順【2026年版】

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未経験でIT企業に入り、退職を切り出した途端に「研修費を返してもらう」と言われた。この請求は、多くの場合そのまま支払う必要はありません。労働基準法16条が、退職と引き換えに金銭を払わせる約束をあらかじめ結ぶことを禁じているためです。ただし例外もあり、すべての請求が自動的に無効になるわけでもありません。

この記事でわかること。

  • 「研修費を返せ」が原則として通らない法律上の理由
  • 例外として返還請求が認められうる条件
  • 請求されたときに、支払う前に確認する手順

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案について法的な判断を示すものではありません。金額や契約内容によって結論は変わります。

「研修費を返せ」と言われる3つの場面

未経験採用のIT企業で研修費の返還を求められる入り口は、大きく3つに分かれます。

入社時の誓約書が最も多いパターンです。「入社後3年以内に自己都合で退職した場合、研修費用として◯◯万円を支払う」といった条項に、入社手続きの書類のなかで署名しているケースです。書類の枚数が多く、内容を読まないまま印鑑を押していることも珍しくありません。

資格取得費用の立て替えも入り口になります。会社がベンダー資格の受験料や講座費を負担し、退職時にその分の返還を求めるものです。IT業界では資格支援制度そのものが一般的なため、制度と返還条項がセットになっていると気づきにくくなります。

無料スクール経由の就職でも話が出ます。受講料が0円のスクールから提携企業へ入社し、短期間で辞めたときに費用の話題が持ち出されるパターンです。ただしこの場合、請求してくる相手がスクールなのか入社先の会社なのかで扱いが変わります。契約書が2通あるはずなので、どちらの契約に基づく請求かを先に切り分けてください。

未経験IT採用でこの話が起きやすいのは、入社後2〜3か月の研修を用意している会社が多いからです。会社側から見ると、戦力になる前に辞められると研修にかけた費用が回収できません。その不安が、返還条項という形で契約書に入り込みます。

労働基準法16条が禁じていること

結論から言うと、「途中でやめたら◯◯万円」と金額をあらかじめ決めておく取り決めは、その時点で法律違反です。

和歌山労働局の「賠償予定の禁止(第16条)」のページに、条文の趣旨が書かれています。「労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしてはいけません」という説明です。禁止される例として挙がっているのが、まさに「途中でやめたら、違約金を払え」という約束です。違反した場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則も定められています。

ここで大事なのは、契約書に書かれた名前ではなく中身で判断されるという点です。項目名が「研修費用返還規定」でも、実質が「辞めたら払え」であれば16条の対象になります。「違約金」という言葉を避けて書いてあるかどうかは関係ありません。

一方で、同じページには注釈もあります。禁止されているのは、あらかじめ金額を決めておくことです。現実に労働者の責任で発生した損害について賠償を請求することまでは禁じていません。つまり「事前に金額を約束させること」と「実際に起きた損害の賠償」は別の話として扱われます。研修費の返還請求は前者にあたるため、原則として認められません。

返還請求が有効になりうる条件

例外はあります。分かれ目は、その研修が業務だったかどうかです。

弁護士事務所の解説によれば、次のような事情があると研修に業務性があると判断されます。

  • 研修が担当業務と直接関係する内容である
  • 自社の教育訓練や能力開発として行われた
  • 業務命令として受講が命じられた

業務性が認められた研修の費用は、会社が負担すべきものとされます。金銭消費貸借契約(貸付)の形をとっていても、実質は16条違反として無効になります。

逆に有効とされた例もあります。留学が社員の自由意思によるもので業務命令ではなく、費用の援助が労働契約とは別の貸付だと整理できるケースです。実際、証券会社が留学費用約3,000万円の返還を求めた裁判で請求が認められた例(東京地判 令和3年2月10日)があります。他方、親会社主催のセミナー受講料などの返還請求が16条違反で無効とされた例(長崎地判 令和3年2月26日)もあります。判断は事案ごとに分かれます。

未経験IT採用の入社時研修に当てはめると、状況はかなりはっきりします。全員が受ける、業務時間内に行われる、受講するかどうかを選べない、給与が支払われている。この条件がそろっていれば業務性が認められやすく、返還請求は通りにくいと考えられます。

研修費の返還請求 | 有効性の分かれ目

どんな研修なら返還請求が通りにくいか

判断されるのは契約書の名前ではなく研修の実態です

受けた経緯費用の性質返還請求の扱い
入社時の全員一律研修 業務時間内・給与あり 業務命令で全員が受講 会社が負担すべき教育訓練 16条違反で無効になりやすい
一律の金額入り誓約書 「3年以内退職で◯万円」 入社手続きで一律に署名 金額が事前に確定している 賠償予定として無効になりやすい
本人希望の留学・費用貸付 個別の貸付契約あり 本人が申し込み業務命令ではない 労働契約とは別の貸付と整理 有効と判断された裁判例がある
  • ※有効か無効かは契約書の文言と研修の実態で個別に判断されます。金額が大きい場合は労働基準監督署か弁護士に相談してください

IT転職ナビ

請求されたときの確認手順5つ

請求を受けたその場で結論を出す必要はありません。順番に確認してください。

1. 根拠となる書面を出してもらう。 どの契約書の第何条に基づく請求なのかを、口頭ではなく書面で示すよう求めます。根拠を示せない請求は、そこで止まることがあります。手元に契約書の控えがなければ、写しの交付も同時に頼んでください。

2. 全員一律か、自分だけかを確かめる。 入社時に全員が同じ誓約書に署名しているなら、個別の貸付ではなく労働契約に付随した取り決めと見られやすくなります。同期に確認できる範囲で構いません。

3. 研修の実態を書き出す。 次の4点が業務性を判断する材料になります。

  • 業務時間内に行われたか
  • その時間の給与が支払われていたか
  • 受講するかどうかを選べたか
  • 内容が担当業務と直接つながるものだったか

研修日程表や給与明細が残っていれば保管してください。

4. その場で署名も支払いもしない。 退職の話し合いの場で新たな確認書や分割払いの同意書を出されても、持ち帰って構いません。いったん署名すると、争うときの出発点が不利になります。

5. 労働基準監督署か弁護士に相談する。 16条は労働基準法の条文なので、労働基準監督署が窓口になります。金額が大きい、すでに給与から引かれている、といった場合は労働問題を扱う弁護士のほうが早く動けます。

会社との交渉と並行して、次の職場を探し始める人も多い段階です。自分がどの職種なら未経験からでも通用しそうかを整理しておくと、次の応募で軸がぶれません。IT/Web転職タイプ診断(無料)で現在地を確認しておくと、面接で「なぜ辞めたのか」を前向きに説明する材料にもなります。

入社前と在職中にできる予防策

すでに請求されている人だけでなく、これから入社する人にも打てる手があります。

入社前は、労働条件通知書と誓約書の該当条項をその場で読み、写真に残してください。見るべきは金額と期間の2点です。「◯年以内の退職で◯◯万円」と両方が具体的に書いてあれば、賠償予定にあたる可能性が高い条項です。内定承諾の前に「この条項はどういう場合に適用されますか」と聞いて構いません。まともな会社なら説明できます。説明を渋る、あるいは質問したことを不快がる会社は、その反応自体が判断材料になります。

在職中にできるのは記録を残すことです。研修の日程、業務時間内かどうか、給与明細。辞めるときに慌てて集めるより、受けている最中に保存しておくほうが確実です。

会社選びの段階では、求人票の「研修充実」という表現だけで判断しないことです。研修の期間と内容、そして費用負担の扱いをセットで聞いておくと、入社後の想定違いが減ります。

次の会社を探し直す段階なら、条件面を一緒に確認してくれる相手がいると判断が早くなります。20代で第二新卒・既卒にあたる人向けには、就業サポートに特化したサービスがあります。

よくある質問

Q. 誓約書にサインしてしまいました。もう払うしかないですか。

署名の有無だけで結論は決まりません。労働基準法16条は、労使が合意していても無効になる強行規定です。署名済みでも、研修に業務性があると判断されれば返還義務は生じないと整理されます。署名したこと自体を理由に諦める必要はありません。

Q. 給与や退職金から勝手に引かれたらどうなりますか。

賃金は全額を支払うのが原則です(労働基準法24条)。法令や労使協定で定められた項目を除き、会社が一方的に控除することはできません。実際に引かれた場合は、給与明細と控除額がわかる資料を保管したうえで労働基準監督署に相談してください。

Q. スクールの違約金と、会社の研修費返還は同じものですか。

別の契約です。スクールの違約金は受講契約に基づくもので、相手はスクールです。会社の研修費返還は労働契約に付随するもので、相手は勤務先です。労働基準法16条が及ぶのは後者だけなので、混同すると打つ手を間違えます。無料スクール経由で就職した場合は、どちらの契約からの請求かを最初に切り分けてください。

Q. 退職した後に請求書が届いた場合はどうすればいいですか。

在職中と対応は変わりません。まず根拠条項の提示を求め、支払う前に相談してください。退職後は社内の資料を取り寄せにくくなるため、退職前に契約書と給与明細の控えを手元に残しておくことが実務的な備えになります。

まとめ

  • 「辞めたら研修費を返せ」と金額をあらかじめ決める取り決めは、労働基準法16条が禁じる賠償予定にあたる
  • 判断されるのは条項の名前ではなく研修の実態。業務命令・業務時間内・給与ありの研修は返還請求が通りにくい
  • 本人の自由意思による留学などで、貸付として整理できる場合には有効とされた裁判例もある
  • 請求されたら、根拠書面の提示を求め、その場で署名・支払いをせず、労働基準監督署か弁護士に相談する
  • 入社前は誓約書の「金額」と「期間」を確認し、写真で残しておく

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参考情報

最終確認日:2026-09-13(各サイトの記載内容は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください)

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、転職・収入を保証するものではありません。