副業でインボイス登録してと言われた…未登録で損する?判断の手順
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動画編集やWebデザインの副業で、取引先から「インボイス登録をお願いできますか」と連絡が来た。登録すると税金が増えそうで怖い。断ったら仕事が減るかもしれない。そんな会社員に向けた記事です。
先に結論を書きます。登録するかどうかは「取引先の負担」と「自分が納める消費税」を金額で比べて決めます。 2026年10月から、未登録の人に払った報酬で取引先が差し引ける消費税は8割から7割に減りました。税込5万5,000円の案件なら、取引先の負担は1件あたり1,500円です。一方、年の売上が税抜100万円の人が登録すると、2026年分は約2万円の消費税を納めることになります。
インボイス登録を求められる理由
取引先が登録を求めるのは、あなたに払った報酬の消費税分を、取引先自身の納税額から差し引くためです。この差し引きを「仕入税額控除」と呼びます。
インボイス(適格請求書)は、登録番号つきの請求書のことです。2023年10月以降、取引先が仕入税額控除を全額受けるには、原則としてインボイスが必要になりました。
年の売上が1,000万円以下の副業なら、あなたはもともと消費税を納めなくてよい「免税事業者」です。免税事業者はインボイスを出せません。取引先から見ると、あなたへの報酬は控除が一部しか使えない支払いになります。
取引先が気にしない場合もある
取引先が次のどれかに当たるなら、あなたが未登録でも取引先の税額はほとんど変わりません。
- 取引先も免税事業者(個人のYouTuberなど、売上が小さい人)
- 取引先が簡易課税(売上から納める消費税を決める計算方法)を選んでいる
- 取引先が2割特例を使っている
「登録してほしい」と言われたら、取引先がどの立場で困っているのかを一度聞いて構いません。聞くこと自体は失礼に当たりません。
2026年10月に変わった控除割合
免税事業者への支払いでも、取引先は消費税分の一部を控除できる経過措置があります。国税庁の「令和8年度税制改正特集」によると、この割合は2026年10月1日から80%が70%に下がりました。
改正前の予定では、2026年10月から50%に下がるはずでした。2026年度の税制改正で下げ幅が緩められ、期限も延びています。
| 取引をした時期 | 取引先が控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月〜2026年9月 | 80% |
| 2026年10月〜2028年9月 | 70% |
| 2028年10月〜2030年9月 | 50% |
| 2030年10月〜2031年9月 | 30% |
| 2031年10月以降 | 控除できない |
割合は、原則として取引をした日(仕事を受けて納めた日)で決まります。9月に始めて10月に納品した案件は、10月の割合で計算される場合があります。
取引先の負担を金額にすると
税込5万5,000円の動画編集を1本受けた場合で計算します。報酬に含まれる消費税分は5,000円です。
- 2026年9月まで:取引先は4,000円を控除でき、負担は1,000円
- 2026年10月から:取引先は3,500円を控除でき、負担は1,500円
- 2028年10月から:取引先は2,500円を控除でき、負担は2,500円
報酬に対する割合では、今の負担は約2.7%です。月に1本の取引なら、取引先の年間負担は1万8,000円になります。この数字を知っておくと、値下げの相談を受けたときに妥当な幅かどうかを判断できます。
登録すると納める消費税の目安
登録すると、副業の売上に対して消費税の申告と納付が必要になります。会社員の給与は関係なく、副業の売上だけで計算します。
計算方法は3つあり、選び方で納める額が変わります。年の売上が税抜100万円(受け取る消費税10万円)の人で比べます。
- 2割特例:受け取った消費税の2割を納める。2026年分は約2万円
- 3割特例:受け取った消費税の3割を納める。個人は2027年分と2028年分で使え、約3万円
- 簡易課税:業種ごとの割合で計算する。サービス業(第5種)は受け取った消費税の半分を納め、約5万円
2割特例と3割特例は、事前の届出がいりません。確定申告のときに選びます。国税庁によると、どちらも基準期間(2年前)の売上が1,000万円以下であることなどが条件です。簡易課税は、原則として使う年より前に届出が必要です。
年の途中で登録した場合、その年に計算の対象になるのは登録日より後の売上です。上の金額は1年分の売上で計算した目安です。
高いパソコンや編集ソフトを買った年は、実際の経費から計算する方法(本則課税)が有利になる場合もあります。どの方法が得かは年ごとに変わるため、迷ったら税務署か税理士に確かめます。
副業のインボイス | 税抜売上100万円の例
登録しない・登録する場合の比べ方
2026年分の計算です。2027年以降は特例が変わります
| 自分が納める消費税 | 取引先の負担 | 手間 | |
|---|---|---|---|
| 登録しない 免税事業者のまま | ○ 0円 | △ 報酬の約2.7%(2026年10月〜) | ○ 消費税の申告なし |
| 登録して2割特例 2026年分まで | △ 約2万円 | ○ なし | △ 消費税の申告が必要 |
| 登録して簡易課税 サービス業(第5種) | △ 約5万円 | ○ なし | △ 事前の届出と申告が必要 |
- ※個人は2027年分・2028年分に3割特例(約3万円)を使えます
- ※登録すると国税庁の公表サイトに氏名が載ります
IT転職ナビ
登録で増えるのは税金だけではない
登録すると、国税庁の公表サイトに登録番号と氏名が載ります。住所や屋号は、申し出た場合だけ載る項目です。
本名で検索されると副業をしていることが分かる場合があります。会社に副業を伝えていない人は、登録の前に就業規則を確かめます。会社に知られる経路は副業は会社にバレる?IT副業を始める会社員の確認手順で整理しています。
消費税の申告期限は、個人の場合は翌年3月31日です。所得税の確定申告(3月15日まで)とは別の手続きになります。
登録するか決める3つの手順
登録するかどうかは、次の順で決めると迷いが減ります。
- 取引先に、登録がないと困る理由を聞く:免税事業者や簡易課税の取引先なら、登録しなくても影響は小さい
- その取引先からの年間報酬を出す:月1万円程度なら取引先の負担は年3,000円前後。月10万円なら年3万円を超える
- 自分が納める額と比べる:2026年分は2割特例の額、2027年以降は3割特例の額で比べる
登録したほうがよい人
次のどれかに当てはまる人は、登録を前向きに考える場面です。
- 取引先が課税事業者の制作会社や企業で、報酬の大半がその取引先から来る
- 「登録している人を優先して発注する」と取引先がはっきり示している
- これから単価の高い企業案件を増やしたい
登録を急がなくてよい人
一方で、次の人は登録を急ぐ理由が薄い状況です。
- 副業の売上が年数十万円で、取引先が個人のクリエイターや小さな事業者
- 取引先が「登録しなくても今の条件で続ける」と言っている
- 副業を続けるか、まだ決めていない
登録は年の途中からでもできます。取引先から改めて求められた時点で考えても遅くありません。
「未登録なら値下げ」と言われたとき
取引先が登録を求めること自体は問題ありません。ただし、一方的な値下げや取引の打ち切りは問題になる場合があります。
公正取引委員会などが公表しているQ&A(2026年1月30日改正)があります。このQ&Aでは、次の行為が独占禁止法や取適法(中小受託取引適正化法)上の問題になるおそれがあると示されています。
- 「課税事業者にならなければ取引価格を下げる」と一方的に伝える
- 値下げに応じなければ取引を打ち切ると伝える
- 話し合いが形だけで、消費税分も払えないほど低い価格を決める
公正取引委員会は2023年5月に、免税事業者へ消費税分の値下げを文書で一方的に通知した発注者へ注意しています。注意した事例にはイラスト制作の取引も含まれます。
話し合いで伝えること
値下げの相談を受けたら、感情ではなく数字で話します。
- 2026年10月以降、取引先は消費税分の7割を控除できる
- 取引先の負担は報酬の約2.7%(税込5万5,000円なら1,500円)
- 値下げ額がその数字を大きく超えるなら、根拠を聞く
2024年11月に施行されたフリーランス法では、発注側に報酬額などの条件を書面やメールで示す義務があります。新しい条件はチャットの口頭ではなく、メールなど形に残る方法で受け取ります。
話し合いで解決しないときは、フリーランス・トラブル110番(厚生労働省の委託事業)に相談できます。報酬のトラブル全般の相談先は動画編集の副業で報酬が払われない…未払いの催促と相談先にもまとめています。
副業を続けるか転職を目指すかで迷っているなら、IT/Web転職タイプ診断(無料)で方向を整理する方法もあります。
よくある質問
Q. 会社員の副業でもインボイス登録できますか
できます。副業で業務委託の仕事を受けている個人は、会社員でも登録の対象です。登録後は、副業の売上について消費税の申告が必要になります。
Q. 登録した後にやめることはできますか
登録をやめる届出を出せば、やめられます。ただし、やめられる時期には決まりがあり、すぐには免税事業者に戻れない場合があります。手続きの時期は国税庁のサイトか税務署で確かめてください。
Q. クラウドソーシング経由の案件でも関係ありますか
関係する場合があります。報酬を払うのが発注者なのか運営会社なのかで、誰がインボイスを必要とするかが変わります。利用しているサービスのヘルプページで、インボイスの扱いを確かめてください。
Q. 未登録のまま「消費税分」を請求してもよいですか
免税事業者が消費税相当額を含めて報酬を決めること自体は禁止されていません。ただし、請求書に消費税額を書くとインボイスと誤解されるおそれがあります。報酬は「税込○円」の総額で取り決めておくと、後から揉めにくくなります。
まとめ
- 2026年10月から、未登録の人への報酬で取引先が控除できる割合は80%から70%に下がった
- 取引先の負担は報酬の約2.7%。税込5万5,000円の案件なら1件1,500円
- 登録した場合、税抜100万円の売上で2026年分は約2万円、2027年・2028年分は約3万円を納める目安
- 登録すると氏名が公表される。会社に副業を伝えていない人は先に就業規則を確かめる
- 「未登録なら値下げ」と一方的に言われたら、数字で話し合い、条件はメールで受け取る
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参考情報
- 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」
- 国税庁 タックスアンサー No.6509 簡易課税制度の事業区分
- 公正取引委員会「インボイス制度の実施に関連した注意事例について」ほか
- 公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」
※税金の取り扱いは、売上の規模や取引の内容によって変わります。控除割合や特例は2026年度の税制改正後の内容です。最新の情報は国税庁の公式サイトでご確認ください(最終確認日:2026-10-24)。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、転職・収入を保証するものではありません。