SESで希望と違う案件は断れる?未経験1年目が断る前に確認すること【2026年版】
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SESに未経験で入って、ようやく案件の話が来た。ところが中身は、開発ではなくテストや監視、データ入力に近い作業だった。「開発がしたくて入ったのに、断っていいのか」「断ったら待機のまま給料が減るのでは」と迷っている人に向けた記事です。
先に結論を書きます。正社員のSESエンジニアは、会社が決めた業務の範囲内の案件なら、原則として業務命令に従う立場です。 ただし、職種を限定する合意がある場合や、経歴の詐称を求められる場合などは断れます。現実的な一手は「黙って受ける」か「断る」の二択にせず、期間や次の希望をつけて会社と話すことです。
案件を断れるかは契約の中身で決まる
案件を断れるかどうかは、気持ちではなく雇用契約の中身で決まります。SESの社員は自社と雇用契約を結んでいて、どの客先のどの案件に入るかは、自社の業務命令として決まるのが通常の形です。
SESの客先とは、自社と客先の会社同士で「準委任契約」という業務委託の契約を結んでいます。働く人に指示を出すのは、客先ではなく自社です。厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)でも、業務委託では受託側の会社が自分で作業者を管理することが求められています。
このため「案件を受けるか」の話し相手は、客先ではなく自社の営業や上司になります。判断の材料は次の3つです。
- 雇用契約書・労働条件通知書の「業務の内容」と「変更の範囲」
- 職種を限定する約束が、書面や面接のやり取りに残っているか
- 打診された案件の中身が、違法や健康を害するものでないか
労働条件通知書の変更の範囲を見る
最初に確認したいのは、入社時にもらった労働条件通知書です。2024年4月から、会社は働く人に「就業場所と業務の変更の範囲」を書面で示すことが義務になりました(厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」・最終確認日:2026-10-14)。
「変更の範囲」は、将来の異動で変わりうる仕事の範囲のことです。たとえば次のどちらが書かれているかで、断れる余地が変わります。
- 業務の変更の範囲が「会社の定める業務」:会社が業務を広く決められる書き方です。テストや監視の案件も、この範囲に入ると読まれやすくなります
- 業務の変更の範囲が「システム開発業務」など具体的:書かれた範囲を外れる仕事は、本人の同意なしには命じにくくなります
2024年3月以前に入社した人は、通知書に「変更の範囲」の欄が無いことがあります。その場合は、雇用契約書の業務欄、求人票、面接で何と説明されたかのメールを手元に集めてください。通知書の見方は内定後の労働条件通知書で未経験が見る3点で詳しく扱っています。
職種限定の合意があれば同意が必要
職種を限定する約束がある人には、2024年の最高裁判決が手がかりになります。最高裁は2024年4月26日、職種を限定する合意がある労働者について、会社は本人の同意なくその合意に反する配置転換を命じる権限を持たないと判断しました(滋賀県社会福祉協議会事件・労働新聞社の報道による)。
この事件では、書面ではなく「黙示の合意」が認められていた点も注目されています。ただし、SESの未経験採用では「業務:ITエンジニア業務全般」のように広く書かれていることが多く、限定の合意が認められるケースは限られます。自分の契約が当てはまるかは、書面とメールをそろえたうえで、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士に確認してください。
断れる案件と交渉で動く案件
打診された案件が、どの種類に当たるかを先に見分けてください。種類によって、断れるかどうかと最初の動き方が変わります。
SESの案件打診 | 断れるかの目安
希望と違う案件の4つのパターン
最終的な判断は契約書と個別の事情で変わります
| 断れるか | 主な根拠 | 最初にすること | |
|---|---|---|---|
| 工程が希望と違う テスト・監視など | △ 業務の範囲内なら従う立場 | △ 労働条件通知書の範囲 | ○ 期間と次の希望を交渉 |
| 職種そのものが違う 限定の合意がある場合 | ○ 同意なく命じられない | ○ 2024年の最高裁判決 | ○ 書面とメールを集める |
| 経歴の詐称が前提 スキルシートの水増し | ○ 断ってよい | ○ 虚偽の申告に加担しない | ○ 断った記録を残す |
| 勤務地・夜勤が違う 通勤や生活が変わる | △ 書面の範囲しだい | △ 就業場所の変更の範囲 | ○ 事情を伝えて相談 |
- ※職種限定の合意が認められるかは、書面ややり取りの内容で個別に判断されます
- ※健康上の事情や家族の介護などがある場合は、その事情も会社に伝えて相談してください
IT転職ナビ
工程の違いは交渉で動くことが多い
テストや監視、運用保守の案件は、未経験者の最初の配属先として多い仕事です。業務の範囲が「会社の定める業務」になっていれば、このパターンを契約上の理由で断るのは難しくなります。そのかわり「いつまで」「その後どうするか」は交渉の余地があります。
経歴の詐称を求められたら断ってよい
スキルシートに「Java実務2年」など事実と違う経歴を書くよう求められた場合は、案件の好みとは別の問題です。客先をだます行為に加わることになるため、断ってかまいません。断り方と記録の残し方はSESで経歴詐称を強要されたときの断り方にまとめています。
断る前に営業へ聞く5つのこと
案件の説明が「テスト案件です」の一言だけなら、断るか決める前に中身を聞いてください。同じテスト案件でも、テスト設計まで任される現場と、手順書どおりに画面を操作するだけの現場では、1年後に書ける経歴が違います。
営業や上司に聞く項目は次の5つです。
- 担当する工程(テスト実行だけか、テスト設計やテストコードを書く作業もあるか)
- 契約期間と更新の見込み(3か月ごとの更新か、長期前提か)
- 使う技術やツール(開発言語、テスト自動化ツール、クラウドなど)
- 現場の体制(自社の先輩がいるか、一人常駐か)
- この案件のあと、開発の案件に移る道があるか、移った先輩がいるか
答えはメールでもらうか、口頭なら後でメールにまとめて送り直してください。条件が後から変わったときに、何を説明されていたかの記録になります。一人常駐の不安がある人はSESの一人常駐がつらいときの対処も参考になります。
断る・条件をつけて受ける伝え方
伝え方は「断る」と「条件をつけて受ける」の2通りを用意しておきます。どちらも、感情ではなく理由と希望を短く伝えるのが基本です。
条件をつけて受けるときの文面
工程が希望と違うだけなら、次のように期間と次の希望を添えて受ける形が通りやすくなります。
この案件はお受けします。入社時にお伝えしたとおり、開発の工程に進みたいと考えています。契約の更新時期に、開発の案件に移れるかを一緒に検討していただけますか。その間に、テストの自動化や学習中の言語でできることがあれば担当したいです。
会社側から見ても、本人の希望と期限がはっきりしている社員のほうが、次の案件を探しやすくなります。テストの経験を開発につなげる手順はテスターから抜け出せないときの判断と手順で扱っています。
断るときの文面
職種の限定がある場合や、通勤・健康の事情で続けられない場合は、根拠をつけて断ります。
今回の案件は、入社時の労働条件通知書で示された業務(〇〇)と内容が異なるため、お受けするのが難しいと考えています。通知書と面接時のメールを添付します。〇〇の範囲で入れる案件があれば、ぜひ検討させてください。
客先面談の前の段階なら、案件の契約はまだ結ばれていません。面談に進んで客先の時間を使ってから断るより、打診の時点で伝えるほうが、自社と客先の両方への負担が小さくなります。
断ったあとの待機と給料
案件を断ると、次の案件が決まるまで社内で待機になることがあります。正社員の待機中も、雇用契約は続いているので給料の支払いは続くのが原則です。
会社の都合で仕事が無い期間について、労働基準法26条は平均賃金の60%以上の休業手当を支払うよう定めています(e-Gov法令検索・最終確認日:2026-10-14)。ただし、本人が正当な理由なく業務命令を断った場合は、会社の都合とはいえず、扱いが変わる可能性があります。待機中の給料の扱いが不安な人はSESの待機中の給料と客先面談の記事も確認してください。
「断ったら給料をゼロにする」「断るなら辞めてもらう」と言われた場合は、日付と発言をメモに残し、総合労働相談コーナーに相談してください。相談は無料で、予約なしで受け付けています。
会社を移るか考える目安
交渉しても状況が変わらない場合は、会社を移ることも選択肢に入ります。目安は次のとおりです。
- 開発の希望を伝えてから、2回目の契約更新を過ぎても配属の話が出ない
- 「次こそ開発」と言われ続けて、具体的な案件名や時期が一度も出ない
- 経歴の詐称を求められるなど、会社の運営に問題がある
移ると決めた場合も、在職中に情報を集めるほうが、収入を切らさずに比べられます。自分に合う職種や働き方がまだ固まっていない人は、IT/Web転職タイプ診断(無料)で方向性を整理してから求人を見ると、次の会社でも同じ配属で悩む事態を避けやすくなります。
入社1〜3年目なら、第二新卒として相談できるエージェントを使う方法があります。SESの経験を職務経歴書にどう書くか、開発の配属がある会社をどう見分けるかを、第三者と一緒に確認できます。
相談したからといって、すぐに転職を決める必要はありません。今の会社で交渉を続けるか、移るかを比べる材料として使えます。
よくある質問
Q. 案件を一度断ると、評価が下がりますか?
A. 会社によって違うため、一律には言えません。理由を説明せずに断るより、通知書の内容や事情を示し、受けられる案件の条件を伝えたほうが、営業も次の案件を探しやすくなります。断ったやり取りはメールで残してください。
Q. 客先から直接「この作業もやって」と言われたら?
A. SESの準委任契約では、客先が作業者に直接指示を出す形は、偽装請負と判断されるおそれがあります。その場で口論する必要はありませんが、契約外と思われる作業を頼まれたときは、自社の営業か上司に報告して判断を仰いでください。
Q. 求人票に「開発案件あり」と書いてあったのに、テストしか回ってきません。
A. 求人票の「開発案件あり」は、全員が開発に入れるという約束とは限りません。面接やメールで「最初から開発に配属」と具体的に説明されていたなら、その記録をそろえて会社に確認してください。入社前の説明と違う場合の確認手順は「聞いていた仕事と違う」ときの確認手順で整理しています。
Q. 案件に入ったあとで、合わないと分かったら?
A. 契約期間の途中で抜けるには、会社と客先の調整が必要です。辞めるかどうかを含めて、SESを案件の途中で辞めたいときの確認事項を参考にしてください。
まとめ
- SESの正社員は、会社が決めた業務の範囲内なら、案件の打診に原則として従う立場
- 労働条件通知書の「業務の変更の範囲」を見ると、断れる余地が分かる
- 職種を限定する合意があれば、本人の同意なく別の職種に変えることはできない(2024年の最高裁判決)
- 経歴の詐称が前提の案件は、好みとは別の問題として断ってよい
- 工程の違いは「期間」と「次の希望」をつけて受ける交渉が現実的
- 2回目の更新を過ぎても開発の話が出ないなら、在職中に転職の情報を集め始める
あわせて読みたい
参考情報
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
- 労働新聞社「職種限定契約下の配転 使用者に命令権限なし 最高裁」
- 大阪労働局「労働者派遣事業の概要」
- e-Gov法令検索「労働基準法」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、転職・収入を保証するものではありません。個別の労働問題は、労働基準監督署や弁護士などの専門家にご相談ください。